2024-08-31

同業者との提携の価値

 専門業というのは多岐にわたり、様々な分野に存在します。
 例えば一般に”サムライ業”と言われる士業として代表的なものは、弁護士・公認会計士・司法書士・税理士・社会保険労務士etc…といくつか出てきますが、それぞれに無償または有償独占されている業務がありますね。
 一般の方々の中には業界の利権だとおっしゃる方もおられますが、それを生業にしている身として思うのは、専門家がいる分野というのは、専門家がいる理由がある。ということです。

 例えば税務に限定したとして、勤め先で年末調整をして貰った人が、確定申告で医療費控除をしたい、ふるさと納税をしたので寄付金控除をしたいというようなケースであれば、高度な専門性は不要とも言えます。一部マニアックな話もあるのですが、国税庁の申告書作成サイトもどんどん使いやすくなっていますし、ご自身でされることをお勧めしています。
 ただ税の世界というのは、当然それだけが仕事ではありません。難しい有利判断や条件による制度利用制限などがあったりするのが現実です。

 税の世界が複雑なこと自体が税理士の利権だと言われることもありますが、多くの税理士は「税はシンプルで分かりやすくあるべき」だと思っています。
 最近は消費税や住宅ローン減税なども顕著ですが、罠が多く複雑で、かつ事後では取り戻せない損失が生じるような税制を望んでいる税理士はいません。税理士は、何かがあれば自らが関与先の代わりに損失を被る立場として、責任を持って税務に携わっている立場ですので、リスクばかりが上がっていくことを望む人はいないでしょう。

 そして複雑な税の世界は、奥深いと同時に幅も非常に広いです。
 街の税理士というのは法人税・所得税・消費税・相続税の基礎論点については抑えた上で関与先対応をしていますが、例えば相続税含む財産評価(資産税)などは、論点を掘り下げていくと非常に深くなっていく世界です。組織再編や国際課税については一般の関与先さんの中では滅多に必要としないものですし、特に国際課税は外国語が前提にあったうえで、他国の税制や租税条約も絡むので、専門性が更に高くなりますね。

 ではそのレアケースにもすぐに対応できるように、街の税理士が全ての知識を網羅できるかというと、答えはノーです。
 例えば税制というものが半永続的に変わらないものであれば可能かもしれませんが、残念ながら毎年コロコロと変わるもので、その改正項目を毎年追いかけて自分の中の知識を刷新していくことが必要な世界です。その中で、更に稀な事例に対応できる知識を深く持っておくというのは、不可能に近い。

 そのため、税理士は同業者との連携も大事にします。
 同業他社は、ライバルよりも協力者でありたい。

 普段は皆が独立した公平な立場でそれぞれに仕事をしているため、孤独な職業です。そのため私もそうですが、一部の税理士は税理士会などの会合に顔を出したり(最近でしたらインターネット上の交流を通じたり)で、同業者と数多く話す機会を持ち、それぞれの事例情報交換などをしています。そこで「○○ならこの先生」という相手との出会いがある。
 私も国際課税なら…資産税なら…と、それぞれに得意な先生方と繋がりを持つようにしていますし、そういった深い専門知識が必要な案件について、紹介でそちらに流すことに抵抗はありません。
 世の中、集客だけして丸投げで中抜き7割くらいというような事務所もあると聞きましたが、私は紹介料などはいただかないタイプです。紹介料をいただくということは、関与先さんが相手に支払う報酬にそのコストが含まれることになりますので、巡り巡って関与先さんのご負担が増えている。

 最近は私も地方税…特に固定資産税で同業者さんに質問をいただくことが増えてきました。
 この道のプロフェッショナルというにはまだおこがましい話ですが、専門性を上げるには事例が欲しいところなので、聞いて頂けるのはありがたい話ですね。
 肩書きは互いに同じ税理士であっても、その専門性が細分化して特化していたり経験値が違ったりと、お互いに情報交換をしたり業務上の提携をして、専門家として恥ずかしくない結果を残していきたいものです。

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